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(日本語)SAP Data Warehouse Cloud, SAP BW bridge: リモートコンバージョン
本ブログはこちらのブログの日本語版になります。
はじめに
本ブログでは SAP Data Warehouse Cloud BW bridge(以下、BW bridge)への リモートコンバージョンの概要をご紹介します。さらに詳しい情報は SAP Data Warehouse Cloud, SAP BW bridge Runbookをご覧ください。こちらのRunbookには事例や、実際の導入プロジェクトの際のTipsなどが含まれています。
概要
リモートコンバージョンを使うと、既存のオンプレミスBWシステムからターゲットとなるBWシステムへメタデータとビジネスデータを同時に移行することができます。ターゲットシステムはレシーバシステムとも呼ばれ、BW/4HANAやBW bridgeが想定されます。BW/4HANAへのリモートコンバージョンは2017年から提供されており、現在ではSAP Data Warehouse Cloud(以下、DWC)内の BW bridgeへのデータ転送も可能になりました。
メタデータのみの移行はシェルコンバージョンとして提供されています。(詳しくはShell Conversion Guideをご覧ください) メタデータの移行はリモートコンバージョンのプロセスの一部なので、シェルコンバージョンはリモートコンバージョンに含まれているといえます。どちらの方法で移行を行うかは、オブジェクトの数やデータボリュームなどの要素によって決まります。
DWCのBW bridgeではBWのアーティファクトをDWC内で再利用することができます。DWCにはBWのモデリングが行われるABAPテナントが搭載され、独自のスペースが作成されます。アドバンストDSO(以下、ADSO)やInfoObjectなどのABAPテナントのテーブルはDWC内のBW bridgeスペースでリモートテーブルとして表示され、他のスペースに共有することで利用ができます。
BW bridge専用スペースはリモートテーブルの表示と、他のスペースへの共有のためのスペースなので、機能は制限されています。例えば、データフローやビューの作成は、BW bridgeからリモートテーブルを共有した他のスペースで行うことになります。
シェルコンバージョンとリモートコンバージョンは、メタデータ転送の際のスコープコレクションロジックに違いがあります。特に依頼管理の依存関係によるものです。リモートコンバージョンを使用する際は、データと依頼情報はセンダーシステムからレシーバーシステムへコピーされ転送される必要があります(依頼IDからTSNへ)。つまり、データ依頼に関連するすべてのオブジェクトは、一貫性を担保するためにスコープコレクションに含める必要があります。
メタデータ転送はオブジェクトタイプを変換します (TLOGO) 。 例えば、クラシックDSO(以下、DSO)とインフォキューブをADSOに、PSAをADSOに(データフローに依りますが、これは任意の場合と必須の場合があります)、インフォパッケージをDTPに変換します。
前提条件
DWCのBW bridgeへのリモートコンバージョンは BW 7.3(SP10以降)以降 と、BW/4HANA 2021(SP00以降)以降で使用できます。また、DMISアドオンのインストールが必要です (こちらはシェルコンバージョンでは必要ありません) 。
詳細な前提条件についてはSAP Note 3141688 – Conversion from SAP BW or SAP BW/4HANA to SAP Data Warehouse Cloud, SAP BW Bridge. をご覧ください。
リモートコンバージョンは2種類あり、1つはセンダーシステムがBW7.xの場合、もう1つはセンダーシステムがBW/4HANAの場合です。上記のSAP noteでは、各センダーシステムに対応した.xmlファイルを含んだ.zipファイル(SAP_Bridge_Transfer_Note_Analyzer_YYYY-MM-DD.zip)を入手できます。
ご自身のセンダーシステムに応じて2つのどちらかをセンダーシステムにインポートしてください(参照:Note Analyzer)
Source_System_for_SAP_BW4HANA_YYYY-MM-DD.xmlのファイルはセンダーシステムに接続されたソースシステム(例: ECC,SCM等)にもインポートする必要があります。これはデータソースのODP対応で必要になります。(参考: SAP Notes 2481315 and 2232584)
インポートした.xmlファイルにはリモートコンバージョンを実行するために必要なSAP noteが含まれています。.xmlファイルは機能強化などによって随時更新されますので、最新のバージョンをインポートするのをお勧めします。
レシーバーシステムがオンプレミス上のBW/4HANAの場合と異なり、.xmlファイルをクラウド上のBW bridgeにインポートする必要はありません。
また、レシーバーシステムがBW/4HANAの場合と異なり、パートナーとお客様は、SAP GUIを使ったBW bridgeへのバックエンドアクセスはできません。BW bridgeのオブジェクトとデータフローはEclipseもしくはHANA Studio(BW Modeling Tools)からのみアクセスが可能です。
ビジネスデータの転送ロジック
ビジネスデータの転送では、スコープ内のテーブルごとにプログラムが自動的に生成され、それぞれのデータを選択、転送し、センダーシステムに送信します。クラスターテーブルはデータ転送プロセスをコントロールし、管理する際に使われます。
一つのテーブルデータ転送処理の各フェーズ/ステップごとに次の1プログラムが生成されます:
- 読込 (データ選択)
- 転送 (センダーシステムからレシーバーシステムへのデータの転送)
- 変換 (データをレシーバーシステムの対応するテーブル内へ挿入)
デルタキューのクローン作成
ビジネスデータ転送の自動化に加えて、リモートコンバージョンの重要な機能は、デルタキューのクローン作成です。デルタキューは、データ転送の前に複製・同期されます。これによってデータ転送が終わった後のデルタロードの一貫性が保証されるというメリットがあります。例えば、センダーシステムに既にデータをロードしているデルタデータソースが複製されると、レシーバーシステムでもデルタの抽出が可能となります。
ダウンタイムは不要です (ただし、クローン作成と同期を高速化するためにデータロードの凍結をお勧めします。) 。この機能によって、センダーシステムとレシーバシステムが共存し、データソースからデータロードを行うことが可能になり、BW bridge(またはBW/4HANA)へのスムーズな移行が可能になります。稼働しているセンダーシステムをすぐにシャットダウンや廃止したくない場合にこの機能を使っていただくことが可能です(例えばビジネスユーザーとアナリストへの検証期間を延⻑したい場合や、ハイブリッドシナリオを実装したい場合など)。シェルコンバージョンではこの機能は提供されません。シェルコンバージョンの場合は、メタデータの転送後にレシーバシステムでスコープ内のすべてのデルタデータソースを手動で初期化およびロードする必要があります。
コンバージョンコックピット
コンバージョンコックピットには転送プロセスのすべてのアクティビティのシークエンスが含まれています。トランザクションコード CNV_MBT_PCTでアクセスできます。
コンバージョンコックピットとタスクリスト
コンバージョンコックピットとタスクリストコンバージョンコックピットは、リモートコンバージョンのエンドツーエンド実行のためのメイン画面です。シェルコンバージョンとは異なり、リモートコンバージョンのプロセスはタスクリスト(トランザクションSTC02)で制御されます。タスクリストとコンバージョンコックピットを組み合わせて使うことで、メタデータの収集・転送と後続のアクティビティでのデータの収集・転送がリンクされます。
アクティビティの順序(フェーズ)
転送実行のパフォーマンスを確認するビューを3種類ご提供しています。標準、拡張、エキスパートの3つです。
下記の8つのアクティビティグループがあります。(フェーズとも呼ばれます)
- パッケージ設定(アクティブフェーズ):スタートポイント。トランスファーパッケージが作成され、RFC設定
- スコープ収集とメタデータ転送:スコープに含まれるオブジェクトの定義と、個々のオブジェクト(メタデータ)の転送
- セットアップフェーズ:データ転送の準備。テーブルプールとマッピングの作成、DDIC比較
- 生成フェーズ:データ転送および最適化機能(並列読込)を有効化するためのプログラムの作成
- システムロック中のプログラムの前処理:PSA抽出、デルタキューのコピーと同期(データ変更はロックされます)
- 転送フェーズ:データ転送に関するタスクの処理(選択、転送、挿入)
- システムロック中の後処理アクティビティ:検証、RSRVチェックと修復、階層と番号範囲の再構築
- 移行後のシステム設定:一時テーブル(クラスタ及びシャドーインフォキューブ)を削除し、パッケージを完了します
Data Warehouse Cloud統合
BW bridgeへのデータ転送にリモートコンバージョンを使用するとき、BW オブジェクトは既にBWセンダーシステムにあるビジネスデータに対応した形でBW bridgeに移行され、DWC(の中のBW bridgeペース)にリモートテーブルとしてインポートされます。
BW bridgeでは、BW bridgeで新しいオブジェクトを作成したり、オンプレミスBWもしくはBW/4HANAからオブジェクトを転送することで、ABAPとクラウドの統合を実現します。
スコープ内のテーブルと、それに付随したデータはリモートコンバージョンを使ってBW bridgeに転送され、それらはDWCのデータビルダ機能を使ってリモートテーブルとしてインポートすることができるようになります。
参考リンク
BW bridgeへのリモートコンバージョンの実行は複雑で、多くのタスクがあります。無事に成功するために、前提条件を確認・実行し、プロジェクトの準備に十分な時間を取ってください。
SAP Data Warehouse Cloud, SAP BW bridge Runbookに加えて、BW bridgeへのリモートコンバージョンで重要な参考資料・リンクをご紹介します。(すべて英語)
資料 | リンク | コメント |
Getting Started with SAP Data Warehouse Cloud, SAP BW Bridge | Getting Started with BW bridge | BWブリッジを開始し、BWブリッジを通じたデータ取得のための環境を準備 |
Using SAP Data Warehouse Cloud, SAP BW Bridge in SAP Data Warehouse Cloud | Using BW bridge | BWオブジェクトををBWブリッジからDWCへリモートテーブルとしてインポートする |
Information/ Restrictions Note for SAP Data Warehouse Cloud, SAP BW bridge | SAP Note 3117800 | BWブリッジでの制限についての情報 |
Conversion from SAP BW or SAP BW/4HANA to SAP Data Warehouse Cloud, SAP BW Bridge. | SAP Note 3141688 | BWもしくはBW/4HANAからBWブリッジへのパスについての説明 |
Simplification List for SAP Data Warehouse Cloud, SAP BW bridge | SAP Note 3154420 | BWブリッジに関連するSAP Noteのリスト |
Data Warehouse Cloud, First Guidance: Development Guidelines and Naming Conventions |
First Guidance | 開発・命名規則に関する既存プロジェクトのベストプラクティスと経験に基づいて、複数のソースシステム接続用の(再利用可能な)データモデルを作成するためのガイドライン |
以上です。お読みいただきありがとうございました。