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SAP Analytics Cloudのビジネスコンテンツの利用
はじめに
このブログポストでは、SAP Analytics Cloudのビジネスコンテンツを実際に利用するために考慮すべき点をご紹介します。SAP Analytics Cloudのビジネスコンテンツの探し方とインストール手順については、SAP Analytics Cloudのビジネスコンテンツの探し方とインストール手順をご参照ください。
ビジネスコンテンツの利用
SAP Analytics Cloudのビジネスコンテンツはサンプル利用/テンプレート利用を想定しており、そのまま本稼働オブジェクトとして流用することは推奨していません。それはビジネスコンテンツのインポート時の上書きオプションによって、誤ってお客様の拡張やデータ、変更を上書きしてしまい、消失することを回避するためです。コンテンツはコンテンツパッケージをまたがって提供されているケースもあり、異なるパッケージをインポートした際にも上書きされる恐れがあります。
また、ビジネスコンテンツの多くは英語で提供されており、日本のお客様が日本語で使用したい場合、SAP Analytics Cloudの翻訳機能を使用してオブジェクトのテキストを翻訳する必要があります。既存のビジネスコンテンツに対して追加した翻訳情報もビジネスコンテンツのインポート時に上書きオプションを選択した場合、上書きされてしまうことに注意してください。
再インポート時の上書きを回避する方法として、ビジネスコンテンツのコピーがあります。ビジネスコンテンツのコピーはそれなりの工数がかかりますが、コピーすることにより、標準コンテンツへの依存を減らし、自由度もあがります。
ビジネスコンテンツをコピーして利用
以下はシナリオごとにビジネスコンテンツのコピー可否やコピーしたオブジェクトでの置換可否を表しています。表を見てわかる通り、ストーリーおよびDigital Boardroomのみをコピーして利用するのが現実的な方法となります。公開ディメンジョンやモデルを再インポートする場合は、上書きオプションを正しく設定して、誤って利用しているコンテンツを上書きしないように注意してください。
ライブ接続 |
インポート接続: 公開ディメンジョンなし |
インポート接続: 公開ディメンジョンあり |
|
モデル | そのまま利用* | コピー | そのまま利用* |
ストーリー | コピーして利用 | コピーしてモデル置換 | コピーして利用 |
Digital Boardroom | コピーしてストーリー置換 | コピーしてストーリー置換 | コピーしてストーリー置換 |
*2020.17からストーリー上でモデルを置換する機能が提供されていますが、まだライブ接続モデルはサポートされていない、置換前後のモデルに同じディメンジョン、メジャーが含まれている必要がある、といった制限があるため、ライブ接続およびインポート接続:公開ディメンジョンありのケースはモデルはそのまま利用することになります。
Digital Boardroom上でのストーリー置換
Digital Boardroom上でのストーリー置換について、ライブ接続のコンテンツ「SAP_FI_Finance_Semantic_Tags」を例にご紹介します。
- ストーリーのコピー
コピー対象のストーリーを選択して、「コピー先」をクリックします。
コピー先のフォルダを選択し、任意の名称に変更して、OKをクリックします。
上記で指定したフォルダにストーリーがコピーされています。
- Digital Boardroomのコピー
コピー対象のDigital Boardroomを選択して、「コピー先」をクリックします。
コピー先のフォルダを選択し、任意の名称に変更して、OKをクリックします。
上記で指定したフォルダにストーリーがコピーされています。
- コピーしたストーリーをDigital Boardroomにインポート
上記でコピーしたDigital Boardroomを編集モードで開きます。
ライブラリからコピーしたストーリーをインポートします。
ストーリーのインポートのダイアログでコピーしたストーリーを選択し、インポートをクリックします。
以下の図のように、ストーリーがインポートされました。
- インポートしたストーリーのページで既存のページを置き換え
トピックに割り当てられているコピー元のストーリーページを削除し、ストーリーライブラリからコピーしたストーリーのページをドラッグ&ドロップで割り当てて、既存のページを置き換えます。
「目次」をクリックして、Digital Boardroomに割り当てられているトピックとストーリーを確認します。トピック「Overview」のストーリーがコピーしたストーリーに置き換わっていることがわかります。上記要領ですべてのトピックのストーリーをコピーしたストーリーで置き換えます。
ストーリー上のモデル置換
モデルをコピーして利用する場合、コピーしたストーリー上で、モデルを置換する必要があります。ストーリー上のモデル置換について、コンテンツ「SAP__TE_GEN_TRAVELEXPENSE」の一部を例にご紹介します。
- モデルのコピー
すべて非公開ディメンジョンで構成されているモデルの場合、モデルのコピー機能でコピーした独自のモデルを登録します。コピー対象のモデル「SAP__TE_GEN_IM_EXPENSEREPORT(SAP Concur Expense Reports)」を選択して、「コピー先」を選択します。
コピー先のフォルダを選択し、任意の名称(今回の場合は「COPY__TE_GEN_IM_EXPENSEREPORT(COPY Concur Expense Reports)」)に変更して、OKをクリックします。
上記で指定したフォルダにモデルがコピーされています。
- ストーリーのコピー
コピー対象のストーリー「SAP__TE_GEN_TRAVELEXPENSE(SAP Concur Travel Expenses)」を選択して、「コピー先」を選択します。
コピー先のフォルダを選択し、任意の名称「COPY__TE_GEN_TRAVELEXPENSE(COPY Concur Travel Expenses)」に変更して、OKをクリックします。
上記で指定したフォルダにストーリーがコピーされています。
- コピーしたストーリーのモデルを置き換え
コピーしたストーリーを開き、編集モードに切り替え、「データ」をクリックします。コピー元のモデルをコピーしたモデルに置き換えるため、「置換」をクリックします。
コピーしたモデルを選択します。
注記:上記画面に記載されているように、モデルの置換を実施する場合、置換先のモデルにすべてのメジャーとディメンジョンが存在する必要があります。したがって、コピーしたモデルを変更する場合、ストーリーをコピーした後に変更してください。先にモデルを変更した場合、ストーリーでモデルの置き換えができない可能性があります。
モデルが正しく置き換えられたことがわかります。ストーリーの保存を忘れないようにしてください。
ビジネスコンテンツの翻訳
上述したように、ビジネスコンテンツの多くは英語で提供されています。したがって、日本語でエンドユーザにコンテンツを提供したい場合、SAP Analytics Cloudの翻訳機能を使用してオブジェクトを日本語に翻訳する必要があります。
- 翻訳作業の事前設定
個々のコンテンツの翻訳を行うためには、まず以下の設定が必要となります。
- SAP Analytics Cloudのテナントのシステム設定で翻訳を許可
初期値は「ユーザコンテンツの翻訳を許可」がOFFとなっているので、ONに変更してください。
- ロール「トランスレータ」の付与
SAP Analytics Cloudのコンテンツを翻訳するための権限を保持したテンプレートロール「トランスレータ」が提供されているため、翻訳作業を実施するユーザにロールを付与してください。
- モデルの翻訳設定の有効化
翻訳対象の「モデル推奨設定」で言語メニューから「モデル翻訳の要求」を選択することにより、SAP Analytics Cloudでサポートされている言語(49言語)への翻訳が可能となります。モデルに公開ディメンジョンが含まれている場合、公開ディメンジョンの翻訳も可能となります。
以下は上記操作を行った後のスクリーンショットとなります。各言語ごとに翻訳ステータスが表示されます。
- ディメンジョンの翻訳設定の有効化
公開ディメンジョンの場合、2の手順で同時に翻訳設定が有効化されます。ディメンジョンは各ディメンジョン設定で有効化およびキャンセルが可能です。
- ストーリーの翻訳設定の有効化
ストーリーを編集モードで開き、「ストーリー詳細」から「翻訳を有効化」します。ソース言語が日本語となってしまう場合は、プロファイルから言語およびアクセス言語をEnglishにして翻訳設定の有効化を試してみてください。ソース言語が日本語の場合、後述の翻訳先言語で日本語が選択できなくなります。
ストーリーについては、ユーザが入力するすべてのテキスト(ストーリー名、チャートタイトルなど)を翻訳することが可能です。
- 翻訳の実施
ブラウズ>翻訳から翻訳可能なオブジェクトの一覧を参照することが可能です。翻訳対象のオブジェクトを選択して、「翻訳を編集」をクリックして翻訳を実施します。
翻訳先言語が「日本語」になっていることを確認し、翻訳を行います。「ソースからコピー」をクリックすることにより、ソースをそのままコピーすることが可能です。ストーリーに含まれるCSSコードなどの一部を翻訳する場合はソースをコピーしたうえで翻訳箇所のみ翻訳してください。
ビジネスコンテンツとソースシステムの接続
ここまではSAP Analytics Cloud上でスタンドアロンで有効化する方法について説明をしてきましたが、ソースシステムとの接続について少し触れておきます。
以下のブログポストでSAP Analytics Cloudのビジネスコンテンツにおけるインポート接続とライブ接続の違いとともに接続方法が説明されているので、参照してください。
SAP Analytics Cloud content based on live vs. data import models
以下に違いを簡単にまとめておきます。
接続 | データソースの切替 | |
インポート接続 | 任意の名称で登録可能 | モデルや公開ディメンジョンのデータソースを予め登録した接続に切替 |
ライブ接続 | ビジネスコンテンツで使用されている接続名称で登録する必要あり | ビジネスコンテンツで使用されている接続名称を使用するため、切替の必要なし |
ビジネスコンテンツとライフサイクルマネジメント
最後にライフサイクルマネジメントの観点から、SAP Analytics Cloudのビジネスコンテンツの利用について触れておきます。詳細はSAP Analytics Cloudのライフサイクルマネジメントの文書を参照していただきたいですが、ライフサイクルマネジメントの観点から3ランドスケープを推奨しています。
ビジネスコンテンツの評価・確認はエクスプローラー用テナントで実施し、必要なコンテンツを選択してテスト用テナントにコンテンツネットワークを利用して移送します。テスト用テナントでは、お客様のご要件に合わせた変更およびテストを行い、本番用テナントに移送して本番利用します。
まとめ
本ブログポストでは、SAP Analytics Cloudのビジネスコンテンツを実際に利用する際に考慮する点をご紹介しました。SAP Analytics Cloudのビジネスコンテンツを実際に利用する際の一助となれば幸いです。
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